不思議なおはなし
この島には 人間の力ではわからない 不思議なおはなしがいっぱい
だから 自然の声に耳を傾けたり 御願所で手を合わせたり
とにかく大自然の神さまとともに 生きていくのが一番
                                うすく村拝
第五話 うんさがなし
このはなしはね 本当にあったこと
人間でもない はたして動物でもない  

その生きものの名は 「うんさがなし」 というのさぁ

うんさがなしは うすぐらい沼に住み
ギラギラした目で人間世界を いつも観察しているらしいさね

たとえばね 馬なんかはねぇ その沼に決して近づこうとしない
どうしても 近くの道を通らなければならない時は
おそる おそる 歩くのだけれども

沼に近寄ったとたん「ハッキョ!」 
天にもとんで行きそうな勢いでにげるのさぁ

その時の馬は 地獄を見たものの顔なんだよ きっと…

その地獄というのが つまり 「うんさがなし」なのさぁ

たとえばね 村の者が馬に水をのませようと 
その沼につれて行くことがあるね
もちろん 馬は近づくはずもない
いつのまにか 手綱は村の者の手から離れて ものすごい勢いで
行ってしまうわけさぁ

あっ そうそう 馬だけじゃないすべての動物がうんさがなしには
恐れをなしているのさぁ

とにかく 動物たちは うんさがなしのいる沼には
近づかないようにしているのだけど

いつのことだったかなぁ
とてつもない大きな牛が うんさがなしの住みかだといわれる 
ゆうなの木をふみつけたり 花をちらしたりで悪さをしたことがあってね

だもんだから うんさがなしがその牛をヒョイともちあげて
クルクルまわしてね
あげくには 四つ足を天にむけてしばりあげ ころがしていたっていうよ

またね 港にゆわえていたサバニ(小船)が 朝になると沼にゆらりとうかんでいたこともあった

そう うんさがなしは大のいたずら好き 

子どものような背丈でねぇ カラジ(髪)も長くて 赤い体をしているって

あんたも いぜなの沼を通りがかる時は 十分注意して歩きなさいよ

だってねぇ うんさがなしはねぇ 
動物ばかりでなく 人間にもいたずらをするんだからね

たとえば 人かくしといって 東の山と西の川と方々につれて行くんだ

気がつくと アダン葉のなかに ねかされていたり
はたまた 松の木のタマタ(二股枝)に座らされたりしていた
これは うんさがなしが人間によくやるいたずらさぁね

さいごに ナァ ティーチ(もうひとつ)
うんさがなしは海にもよく出没して ウミンチュ(漁師)などと友達になっていろいろ問題をおこすらしい

魚をとるのが上手で 目玉だけをクワッチー(好物)にしている
きらいなものといえば
ティーヤーチー(タコ)と人間のおなら
まぁ そういうふうに子どもみたいに 無邪気なとこもあるのが
うんさがなしさぁ

とにかく うんさがなしはのっぴきならないやつなんだ

あんたも いぜなにきたら きっと例の沼を通りがかるとおもう

人かくしにあわないように タンクィリヨォー(気をつけて)
とくにユマンギィ(夕方)は危ないからよ

はい おしまい

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